第29回日本ヘリコバクター学会学術集会のご報告|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

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医療コラム

第29回日本ヘリコバクター学会学術集会のご報告|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

第29回日本ヘリコバクター学会学術集会のご報告

第29回日本ヘリコバクター学会学術集会のご報告

ヘリコバクター学会

 今回は、第29回日本ヘリコバクター学会学術集会に参加しての感想などについて書きたいと思います。
 ヘリコバクター学会と聞くと、「ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)だけのことで学会なんてできるのか?」などと不思議に思われる方も多いかもしれません。実際、医師の中でも「ピロリ菌なんて除菌したら終わりでしょ」とか「ピロリ菌なんてもう研究の余地なんてない」とか言われる方もおられます。そんな医師は決まって、実際にはピロリ菌除菌などの実診療に関わっていなかったり、関わっていたとしてもテキトーな診療をしていたりする方なのですが。自分が知らないことは大して重要でないことと思いがちです。私も気を付けようと思います。

小児期のピロリ菌関連ディスペプシア

 初めにご紹介するのは、学術集会最優秀賞を受賞された演題です。演題名:小児期にもH.pylori関連ディスペプシアは存在するか、 演者:幾瀬 圭 先生(順天堂大学医学部小児科)。ディスペプシアという聞きなれない言葉が出てきました。ギリシャ語に由来するbad digestion(悪い消化、消化不良)という意味の言葉で、医学用語としては、みぞおちの痛みや胃もたれなどみぞおちを中心としたおなかの症状を指します。大人では、ピロリ菌感染がディスペプシアの原因になりうることが示されていますが、子供では関連性がはっきり分かっていません。幾瀬先生は、順天堂大学病院での過去の診療録(カルテ)からデータをまとめて、小児でも58%(18/31)がピロリ菌除菌治療でディスペプシア症状がなくなっていたことを報告されました。1つの施設の後ろ向きに集められたデータなので絶対的なことは言えませんが、子供でもピロリ菌感染がディスペプシアの原因になることを示唆する発表でした。

ガイドラインの改訂

 次に紹介するのは、ピロリ菌感染の診断と治療のガイドラインの改訂作業についてです。今のガイドラインは2016年に作られたものであり、すでに7年が経ってしまいました。その間に多くの新しいことが分かってきましたし、ピロリ菌感染率などの社会的状況も変わってきました。社会的にもガイドラインの改訂が望まれています。ヘリコバクター学会などで専門家が議論したり知識を共有したりすることも大切ですが、一般の医師が適切な治療を行えるように指針を出すことも専門家集団の大事な役割です。改訂版は、公益財団法人日本医療機能評価機構が質の高い診療ガイドラインの普及を通じて、患者と医療者の意思決定を支援し、医療の質の向上を図ることを目的として行っているEBM普及推進事業の基準に則るように、「診断」「適応・治療」「胃がん予防・成人」「未成年期における胃がん対策」のテーマ毎に責任者を決めて作業が進められています。今回はガイドラインの進捗状況について確認することができました。
 そのほか、前回のブログで触れましたピロリ菌以外のヘリコバクター属の細菌(NHPH, Non-Helicobacter pylori Helicobacter)や腸内細菌叢と関連、ピロリ菌を除菌した後の胃がんなどについても発表があり、議論されていました。

最後に

今回の学会参加を通じて、日々勉強することの必要性を再認識させられましたし、診療を通じて地域の皆様に還元できたらよいと思います。

 

ピロリ菌感染症 についてはこちらをご覧ください。

機能性ディスペプシア については、こちらをご覧ください。