慢性胃炎|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

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慢性胃炎

慢性胃炎|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

慢性胃炎・萎縮性胃炎

慢性胃炎・萎縮性胃炎とは

慢性胃炎・萎縮性胃炎とは

胃の粘膜は胃の内面を覆う膜のようなもので、表面には小さなくぼみがたくさん開いており(胃小窩(いしょうか))、そこから細い管が下に伸びています(腺(せん))。ピロリ菌が感染するなどして胃粘膜に炎症がおこった状態が胃炎であり、その状態が長く続いたものが慢性胃炎です。慢性の炎症は胃の正常なつくりを変化させ、腺(せん)の配列は乱れ、密度は小さくなり、粘膜の厚さは薄くなります(胃粘膜委縮)。この状態を萎縮性胃炎といいます。萎縮性胃炎の原因には、ピロリ菌感染のほかに自己免疫性胃炎(A型胃炎)があります。

初期のピロリ菌感染症と胃粘膜

胃の粘膜は様々な機能の細胞で成り立っており、胃酸をつくる細胞(壁(へき)細胞)は胃の上3分の2(胃体部、穹窿部)にあります。そのため、胃酸は胃の下3分の1(幽門部、前庭部)で少なくピロリ菌にとって生きやすい環境であり、感染して始めのうちは胃の下3分の1で炎症が強いです。このとき、胃の粘膜ではリンパ球という免疫細胞が活発に反応して、小さなかたまり(結節(けっせつ))がたくさんできます。これが羽をむしり取った後の鳥の肌に似ていることから、鳥肌状胃炎(とりはだじょういえん)とか結節状胃炎(けっせつじょういえん)などと言われます。10代のピロリ菌感染者ではこのような胃炎が起きていることも多いですが、大人になってもこのような胃炎が続いている場合にはタチの悪い胃癌である低分化癌(ていぶんかがん)のリスクが高いという報告もあります。

ピロリ菌感染による胃粘膜委縮の広がりと胃酸分泌の低下

ピロリ菌感染による胃粘膜委縮の広がりと胃酸分泌の低下

胃の下3分の1での炎症が続くと胃の腺の配列は乱れ密度も小さくなって、粘膜は薄く変化します(胃粘膜委縮(いねんまくいしゅく))。また、同時に炎症の範囲は上の方に徐々に広がっていきます。胃の上3分の2にある胃酸をつくる細胞(壁細胞)が炎症によっていなくなると胃酸がつくれなくなり、胃の上3分の2も徐々にピロリ菌の生きやすい環境に変わっていき、やがて胃の上3分の2も胃粘膜委縮がおこります。このように、ピロリ菌感染は時間の経過とともに連続的に胃粘膜を変化させ、最終的に胃粘膜全体を薄っぺらにしてしまい(胃粘膜委縮)、胃酸をつくる能力を無くしてしまいます。

自己免疫性胃炎による胃粘膜委縮

自己免疫性胃炎による胃粘膜委縮

自己免疫性胃炎は胃をつくる細胞である壁細胞(へきさいぼう)を敵や異物とみなして壊してしまう病気です。上で述べたように壁細胞は胃の上2/3にありますから、自己免疫性胃炎ではその範囲で炎症が起きて、胃粘膜が萎縮します。胃粘膜が萎縮する範囲がピロリ菌感染の場合と違うので区別は簡単のように思えますが、実際には自己免疫性胃炎による胃粘膜委縮が軽く胃カメラでわかりにくかったり、ピロリ菌感染の合併があって胃粘膜委縮の範囲だけでは区別できなかったりすることもあります。
自己免疫性胃炎では、胃酸をつくることができなくなったり、壁細胞の中にある内因子(ないいんし)というたんぱく質も無くなることでビタミンB12を吸収できなくなったりします。ビタミンB12は内因子とくっついて小腸の出口近くの回腸末端部(かいちょうまったんぶ)で吸収されるのですが、このシステムが働かなくなると身体の中でビタミンB12が足りなくなり、貧血や神経障害の原因になります。また、自己免疫性胃炎では甲状腺の病気である橋本病を合併することもあります。

慢性胃炎・胃粘膜委縮の症状

慢性胃炎ではほとんど症状を起こさないとされていますが、ピロリ菌を駆除(除菌)した後に食欲が増したり、食事をおいしく感じたりする方もいます。症状が無いというよりは子供のころからずっと症状があるのを当たり前のものと感じてしまっているだけかもしれません。胃の痛みやもたれなど(ディスペプシア症状)がある場合にはピロリ菌感染が確認されれば除菌治療を先に行うことが推奨されています。

胃粘膜委縮の広がりと胃がんのリスク

胃粘膜委縮の広がりと胃がんのリスク

胃粘膜委縮の広がりは胃がんリスクと関連していることが知られており、胃粘膜委縮が広がる前の若いうちにピロリ菌を駆除(除菌)して胃がんリスクを最小限にとどめることが大事です。胃の炎症が進むと、胃粘膜には腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)という変化が起き、これも胃がんのリスクが高いことの目安になります。胃カメラで胃粘膜委縮の広がりや腸上皮化生の有無を見ることで胃がんリスクを知ることができます。また、ピロリ菌の除菌治療によって胃粘膜委縮の広がりは年単位で徐々に縮まってきますが残ることも多いです。また腸上皮化生は除菌治療をしてもほとんど元に戻らないことが報告されています。
自己免疫性胃炎でも胃がんや神経内分泌腫瘍のリスクが高くなることが報告されています。