鎮静剤をうまく利用して、胃・大腸がんの早期発見を!|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

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医療コラム

鎮静剤をうまく利用して、胃・大腸がんの早期発見を!|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

鎮静剤をうまく利用して、胃・大腸がんの早期発見を!

鎮静剤をうまく利用して、胃・大腸がんの早期発見を!

胃・大腸カメラに鎮静剤を使用して、苦痛を軽減

 胃カメラも大腸カメラも決して楽な検査ではないですよね。胃カメラではスコープ操作でのどが刺激されてオエッオエッと嘔吐反射が出てしまいますし、おなかの張りも辛いです。大腸カメラでは挿入時にS状結腸などが伸ばされやすく、観察時には腸が広げられる苦痛が伴います。この苦痛は個人差が大きく他人と比較できないものです。せっかく胃がんや大腸がんを早期がんやその前段階で発見できる良い検査なのですが、この苦痛が伴うことで多くの方が検査を避けてしまっているのが現状と思います。これを緩和してくれるのが、鎮静剤の使用です。偶発症リスクなどデメリットもあることは承知していますが、鎮静剤なしでは胃カメラ・大腸カメラを受けられない方がいるのも紛れもない事実です。リスクを承知の上で、適切な鎮静剤の使用による苦痛の少ない胃カメラ・大腸カメラを受けていただくことが個人だけでなく、地域全体の胃がん・大腸がんの早期発見・早期治療につながると確信しています。

胃カメラvs胃バリウム検査

 胃カメラは辛くて、胃バリウム検査で胃がん検診を続けて受けておられるという方も多いと思います。胃カメラと胃バリウム検査はどちらが良い検査なのでしょうか?胃バリウム検査は日本で発達し胃がん検診に長らく貢献している検査方法です。胃がん検診として胃がん死亡を減らすことのエビデンスも確立しています。医師だけでなく、放射線技師が実施・読影することができ、多くの対象者を検査できるというメリットがあります。費用も安価です。一方で、胃カメラは早期胃がんの発見に関して胃バリウム検査よりも優れています。しかし、胃がん検診として胃がん死亡を減らすことのエビデンスは専門家の意見が一致していません。また、胃カメラを施行できるのは医師だけですから、対象者数の観点では胃バリウム検査に劣ります。費用も高額になります。

 以上のことから、日本の胃がん検診では胃バリウム検査が基本で、一部の市区町村で胃カメラが選択肢となっています。次に海外に目を向けてみると、韓国では胃がん検診は全面的に胃カメラに切り替わりました。先述した胃カメラの胃がん検診としての有効性の解釈が日本と異なったということになります。エビデンスが十分に出そろってから実社会に反映したのでは遅すぎるという判断だと思われます。日本では慎重というか、保守的な政策がとられています。

 これまでは胃がん検診としての比較でした。つまり、日本全体の集団に対してどの検査が良いかという評価基準でした。では、個人としてはどちらの検査が良い検査なのでしょうか。結論的には胃カメラが優れていると思います。例えば、胃がん死亡が少なくなるといっても、ESD(内視鏡的粘膜下剥離術)などの局所治療で完治するのと、胃全摘出術で胃を丸ごと取って完治するのでは体にかかる負担もその後の食事・栄養への影響も全く違います。胃バリウム検査で見つかる早期胃がんももちろんありますが、外科手術が必要になる段階で見つかることのほうが多いです。一方で、定期的に胃カメラを受けて早期胃がんの段階で発見できれば、体の負担を最小限に治療することができるのです。費用についても胃がん検診を活用したり、症状があれば健康保険を利用したりすれば自己負担額5,000円以内で受けることができますからリーズナブルと思います。あとは検査に伴う苦痛が残りますが、こちらも鎮静剤を利用することで解決できるのではないでしょうか。

 胃がんリスク評価としてのピロリ菌検査、リスク低減のためのピロリ菌除菌治療の重要性については、また別の機会に述べたいと思いますが、ピロリ菌感染・除菌治療の有無によって胃カメラや胃バリウム検査の適切な検査間隔が変わってきますので、一生に一度はピロリ菌検査を受けることをお勧めします。

日本だけ!?大腸がんが増えている先進国

 胃がん発生率はピロリ菌除菌治療の普及によって頭打ちとなっていますが、大腸がん発生率、死亡者数はともに右肩上がりで増えています。大腸がん死亡者数が増えているのは、先進国の中で日本だけなのだとか。これだけ医療費を費やしているわが国で、あってはならない現実です。医療費の使い方にも効率性の観点が必要な状況になっているように思います。少し、話がずれてしまいました。

 話を戻して、大腸がん死亡者数のお話です。日本の他の先進国では大腸がんの死亡者数が減っているのですが、特にアメリカ合衆国の減少が目立ちます。これはオバマ大統領時代の政策に依るところが大きいとされており、当時の副大統領バイデン氏(現 大統領)が実子をがんで亡くしたことにも関連して、がん対策が強化されました。抗がん剤の開発研究費が援助されることなどが日本でも大きく報道されていましたが、大腸がん対策として全国民が一生に一回だけ大腸カメラを受けられるサービスが提供されるようになったのです。健康保険未加入者が大半を占め、大腸カメラ検査に数十万円の費用が掛かるアメリカ合衆国で画期的な政策です。また、1人1回の大腸カメラで死亡率が減少するとは、大腸カメラの有益性がよくわかりますね。

 ちなみに、アメリカ合衆国では大腸カメラも胃カメラも全身麻酔で行われ、検査は寝ている間に終わります。日本では全身麻酔で胃・大腸カメラを受ける方は特別な事情のある方だけで、ほとんどの方が苦痛を我慢して検査を受けている状況です。患者様の我慢の上に成り立つ医療って何でしょうか?全身麻酔は過剰な気もしますが、鎮静剤をうまく利用して苦痛を軽減することはあるべき医療の姿と考えています。

鎮静剤を使ったら車の運転はできない?

 「1時間ほど休んだから車で帰ってもいいでしょう?」鎮静剤を使用した内視鏡検査の後に、こんな言葉を耳にすることがあります。鎮静剤を使っても、しばらく休むと薬の作用がなくなってしまったような気がします。けれど、薬の作用は完全には切れていません。検査の翌朝まではお車の運転は避けていただく必要があります。お酒を少量でも飲んだら車の運転をしないことはかなり浸透しているように思いますが、鎮静剤を使用した場合も、飲酒した場合と同様の対応が必要になります。酔っ払いの「おれぇはぁ・・・よってぃないぞぉぅ」の言葉を信じる人は居ないでしょう。鎮静剤を使用した内視鏡検査の後の「もう、何ともないです」の言葉も同じです。お酒や薬の影響で十分な判断ができない方が「大丈夫」かどうかは、客観的になされるべきものなのです。

 道路交通法第六十六条「過労運転の禁止」の項目には「何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。」とあります。違反した場合の罰則としては、違反点数25点で一発メントリ(免許の取消し(欠格期間2年))、さらに刑事罰として「5年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科されます。とても重い罰則で、「面倒くさい」とか「タクシー代がもったいない」とかといった理由では全く割に合わない罪です。内視鏡検査で鎮静剤をご希望の際は、ご家族・ご友人による送迎、バス・タクシーなどの利用をお願いいたします。