下痢症|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

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下痢症

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下痢症とは

下痢症とは

ドロドロの便(泥状便)、シャバシャバの便(水様便)など水分を多く含むウンチが出る状態のことです。排便回数が増えたり、1回の排便量が増えたりする場合が多いです。

ウンチに含まれる水分

ウンチに含まれる水分

ヒトの消化管は口から食道、胃、小腸、大腸までつながっていますが、水分の出入りはどうなっているのでしょうか。1日単位で考えてみると、食事などで約2Lの水分が口から入ってきて、唾液が約1L分泌されて意識せずに飲み込んで胃に入ります。胃液は約2L分泌されて、胃は水分を吸収しませんので、合わせて約5Lの水分が小腸に流れ込みます。小腸では小腸液が約1L分泌され、胆汁が約1Lと膵液が約2L流れ込んでくる一方で、約7.4Lが吸収されます。大腸には1.6Lが流れ込んで、その大部分が大腸で吸収され,糞便には約 0.1Lの水分がウンチに含まれて出てきます。大腸における水分の吸収能力は 1日あたり最大4Lに及ぶと考えられていますが、小腸や大腸において分泌液が増えたり、吸収量が減ったりするとウンチに含まれる水分が増えて下痢になります。腸のぜん動運動(食事や便を下に移動させる動き)は水分の吸収量に関わっていて、ぜん動が強くなると腸を通る時間が短くなることで水分を吸収する量が減り、下痢になります。

下痢の原因は?

1.食事内容に関連するもの
  • アルコール
    アルコールは浸透圧が高く、腸の中に水分を引き込む働きがあります。そのため、お酒を飲みすぎると下痢になります。
  • 油脂(あぶら)
    脂肪分は胆汁や膵液で分解されますが、分解しきれないと腸への刺激が強くなり、腸液の分泌が増えてしまいます。油脂(あぶら)を含む食事を食べすぎたり、膵臓に慢性の炎症が起きるなどして膵液の分泌が少なくなったりすると、下痢になります。
  • 牛乳、乳製品
    牛乳や乳製品には乳糖(ラクトース)が含まれていて、ラクターゼという酵素によって、グルコースとガラクトースに分解されてから吸収されます。乳糖が分解されずに大腸まで移動すると、腸内細菌のエサになりガスを発生させるなどして、下痢の原因になります。乳糖を分解するラクターゼの働きは乳幼児以降に低下し、日本人の成人では80%以上が乳糖不耐との報告があります。また、牛乳を飲んで腹痛や下痢などを起こすのは約25%と報告されています。
2.感染性腸炎(1-2週間で治まる下痢)

十分に火の通っていないお肉、卵、生魚などを介して、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌、腸炎ビブリオといった細菌が腸に感染して、腸液の分泌が増え、腸からの水分吸収が減り、腸の動きは強くなって下痢になります。カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌の腸炎では便に血が混じることがあります。O-157をはじめとする腸管出血性大腸菌では溶血性尿毒症症候群と呼ばれる命に関わったり、重い後遺症を残したりすることがある病気につながることがあります。強い腹痛があったり、下痢になって2日以内に便に血が混じったりする場合には早めに受診することをお勧めします。ノロウイルスを代表としたウイルス性腸炎でも細菌性腸炎と同様のメカニズムで下痢になります。ノロウイルスは感染力が非常に強いので、感染拡大の予防が大切です。

3.感染性腸炎(2週間以上続く下痢)

クロストリジウム・ディフィシル、結核、エルシニア、赤痢アメーバ、ジアルジア、腸管スピロヘータなどの感染があると、下痢が2週間以上続きます。肺炎などで抗菌薬を使用すると腸内細菌のバランスが崩れ、クロストリジウム・ディフィシルが増殖して腸炎を起こすことがあります。重症化すると命にかかわることのある病気ですので、不要な抗菌薬の使用は避けるべきです。結核は肺の病気で腸には関係ないとか、昔の病気だとか思われる方も多いかもしれませんが、肺炎を起こさずに腸炎だけ起こす結核もあります。特に高齢者の慢性下痢では鑑別に上げる必要があります。

4.炎症性腸疾患など

潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管ベーチェット病といった炎症性腸疾患の他、好酸球性胃腸炎、顕微鏡的大腸炎(膠原線維性大腸炎とリンパ球浸潤大腸炎)などは腸に炎症を起こして、慢性下痢の原因になります。いずれも診断のためには大腸カメラが必要になります。好酸球性胃腸炎では気管支喘息などアレルギー疾患をもっておられる方が多いですし、膠原線維性大腸炎(collagenous colitis)では痛み止めの薬(非ステロイド性鎮痛薬)や胃酸を抑える薬(プロトンポンプ・インヒビター)が原因になることがあります。

5.吸収不良症候群

膵臓に慢性の炎症が起きるなどして膵液の分泌が少なくなったりすると脂肪分を分解できなくなり、分解できなかった脂肪分が腸を刺激して腸液の分泌が増えて下痢になります。
日本人の成人の多くは牛乳や乳製品に含まれる乳糖(ラクトース)を分解するラクターゼの働きが悪いと報告されています。このような方が牛乳や乳製品を摂ると、乳糖が分解されずに腸内細菌のエサになりガスを発生させるなどして、下痢の原因になります。その他、腸管リンパ管拡張症、アミロイドーシスなどでも栄養素をうまく吸収できずに慢性下痢の原因となります。

6.過敏性腸症候群

下痢と便秘を繰り返すのが特徴です。詳しくは過敏性腸症候群のページをご覧ください。

下痢の治療法

原因に応じて治療法が異なりますので、原因を突き止めることが大切です。対症療法として下痢止めの薬を使うことがありますが、感染性腸炎が原因の場合には下痢を止めることで細菌やウイルスが体の中に長くとどまってしまい、治りを悪くすることがあるので注意が必要です。