大腸ポリープ
大腸ポリープ
大腸の内側に向かって盛り上がる病変のことで、通常型腺腫、鋸歯状ポリープなどに分類されます。さらに、鋸歯状ポリープは、過形成性ポリープ、鋸歯状腺腫(TSA, traditional serrated adenoma)、鋸歯状病変(SSL, sessile serrated lesion)に分けられます。
腺腫を介して発がんするという経路が最も多く、がん化の70-80%を占めるとされています(adenoma-carcinoma sequence, conventional pathway)。癌化のリスクは、腺腫の大きさ、質(たち)の悪さ(異型度)、絨毛成分の有無などが報告されていますが、大きさが10mm以上では癌化率が10-25%に上昇するとされています。また、正常な大腸粘膜から腺腫になるときにAPC遺伝子の異常がかかわっていることが知られています。そこにKRAS遺伝子、SMAD4遺伝子、TP53遺伝子の異常が加わって大腸がんができてきます。
次に多いがん化の経路は鋸歯状ポリープを介する鋸歯状経路(serrated pathway)です。正常な大腸粘膜にBRAF遺伝子またはKRAS遺伝子の異常が起こると過形成性ポリープができます。BRAF遺伝子異常のある過形成性ポリープの一部は鋸歯状病変(SSL, sessile serrated lesion)に変化し、KRAS遺伝子異常のある過形成性ポリープの一部は鋸歯状腺腫(TSA, traditional serrated adenoma)に変化すると考えられています。これらにMLH1遺伝子やp16遺伝子の異常が加わって大腸がんができてきます。
そのほかに、正常の大腸粘膜から良性ポリープを介さずに直接発がんする大腸がん(de novoがん)があり、TP53遺伝子の異常がかかわっていると考えられています。
ほとんどの場合、無症状です。
大腸カメラで大腸ポリープが発見されたら、そのままポリープの大きさや性質を診断します。通常の光(白色光)で観察するだけでも大まかに性質を予測することはできますが、インジゴカルミンという青色の色素やクリスタルバイオレットという紫色の色素をまいてポリープ表面のピットと呼ばれる凹凸模様を観察したり、血液中のヘモグロビンの赤色に吸収される光を使って観察して(狭域帯光観察;NBI, narrow band imaging)ポリープ表面の血管模様を観察したりすることでポリープの性質をより正確に知ることができます。拡大観察を併用すればさらにその正確さが増します。
ポリープの大きさ、形、予測される性質によってポリープを切除するか決めます。ポリープは糸のように細い金属を使って切り取るのですが、電気をかけないで切り取る方法、電気をかけて焼き切る方法、ポリープの下に生理食塩水を注射してポリープを持ち上げた状態で電気をかけて焼き切る方法があり、これもポリープの大きさ、形、予測される性質から判断されます。
10mm未満のポリープの場合にはその場で切除し、日帰り手術となることがほとんどです。一方、10mmを超えたポリープの場合には、後日改めて入院施設を整えた医療機関で治療することがあります。
当院の大腸カメラについてはこちらをご覧ください。