
便潜血
便潜血
なんだか身近なようで、意外とよく知らない「便潜血検査」。健康診断や自治体のがん検診で受けたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、大腸がんをはじめとする大腸の病気を早期に見つけるための、とても大切で手軽な検査です。
このページでは、便潜血検査について、その目的と結果が陽性だった場合にどうすれば良いのか、分かりやすく丁寧にご説明します。「そういえば、そろそろ検査の時期かも…」という方も、「陽性って言われたらどうしよう…」と不安な方も、便潜血検査について正しく理解し、安心して検査を受けていただければ嬉しいです。
まず、なぜ便潜血検査が重要なのか、その目的からお話ししましょう。
便潜血検査は、文字通り「便の中に隠れている血液(潜血)」があるかどうかを調べる検査です。目には見えないわずかな血液でも検出できるのが特徴です。
では、なぜ便の中に血液が混じるのでしょうか? それは、大腸の中に何らかの病気があり、そこから出血している可能性があるからです。特に注意が必要なのは、大腸がんや大腸ポリープです。
大腸がんは、早期に発見して適切な治療を行えば、治癒率が高いがんです。しかし、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多く、「なんとなくお腹の調子が悪いな」「血便が出たな」といった症状が現れた時には、ある程度進行してしまっていることも少なくありません。
そこで役立つのが、便潜血検査です。進行する前に、病変からのわずかな出血を捉えることで、「もしかしたら大腸に何か異常があるかもしれない」というサインを見つけることができるのです。いわば、大腸からの「SOS」を見つけ出す検査と言えます。
この検査は、大腸がん検診のスクリーニング検査(ふるい分け検査)として広く行われています。多くの人が手軽に受けられるようにすることで、より多くの大腸がんを早期に発見し、命を救うことにつながっています。
便潜血検査の結果は、主に「陰性」または「陽性」で通知されます。
「陰性」という結果は、採取した便から目に見えない血液(潜血)が検出されなかった、という意味です。これは、現時点では大腸からの出血はないと考えられるため、大腸がんや進行したポリープの可能性は低いと判断されます。
しかし、「陰性だから絶対に大腸がんではない」というわけではありません。たまたま出血していない病変や、出血しにくい病変も存在します。便潜血検査は、あくまで「出血」というサインを手がかりにする検査だからです。ちなみに、便潜血検査(2日法)は大腸がんに対する感度が83%、特異度が96%と報告されています(日本の研究)。
そのため、便潜血検査が陰性であっても油断は禁物で、毎年、定期的に検査を受け続けることが大切です。また、お腹の調子が悪いなど、気になる症状がある場合は、陰性であっても医療機関を受診しましょう。
「陽性」という結果は、採取した便から目に見えない血液(潜血)が検出された、という意味です。
「陽性」と聞くと、「がんかもしれない!」と不安になってしまう方がほとんどだと思います。しかし、落ち着いてください。「陽性=大腸がん」ではありません。
便潜血検査で陽性となる原因は、大腸がんやポリープ以外にもたくさんあります。
例えば、
など、様々な原因が考えられます。
便潜血検査が陽性だったということは、「大腸のどこかから出血している可能性があるため、詳しく調べてみましょう」というサインなのです。
便潜血検査が陽性だった場合、次に取るべき行動はただ一つ、医療機関を受診して精密検査を受けることです。
陽性という結果に動揺したり、「どうせ痔だろう」と自己判断して放置したりすることは絶対に避けてください。放置してしまうと、もし大腸がんがあった場合、発見が遅れてしまう可能性があります。
医療機関では、問診・診察の上、陽性の原因を特定するために精密検査として「大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)」が勧められます。
大腸カメラ検査は、便潜血検査で陽性だった場合の精密検査として、最も重要視されています。便潜血検査では「出血があるかないか」しか分かりませんが、大腸カメラ検査では、大腸の粘膜を直接観察することで、出血している場所や、出血の原因となっている病変(ポリープやがん、炎症など)を詳しく調べることができます。
大腸内視鏡検査に対して、「痛そう」「苦しそう」といった不安を感じる方も多いと思います。確かに、検査中にお腹が張ったり、痛みを伴ったりすることはありますが、鎮静剤や鎮痛剤を使用してリラックスした状態で検査を受けられるようにしたり、お腹の張りを軽減するために空気ではなく二酸化炭素を送気したりすることで、苦痛を少なく検査を受けていただくことができます。
大腸カメラについてはこちらをご覧ください。
便潜血検査は、大腸がんを早期に発見するための、手軽で有効な検査です。完璧な検査ではありませんが、定期的に受けることで、大腸がんによる死亡リスクを下げることが科学的に証明されています。
便潜血検査で「陽性」と判定されても、必ずしも大腸がんではありません。しかし、精密検査を受けることで、出血の原因を特定し、もし早期がんやポリープが見つかっても、適切な治療によって完治を目指せる可能性が高まります。
40歳を過ぎたら、年に一度の便潜血検査を習慣にしましょう。そして、もし陽性だった場合は、不安になりすぎず、必ず医療機関を受診して大腸カメラ検査を受けてください。