胃がん検診を受けましょう!
- 2025年6月22日
- 消化器の病気
胃がん検診を受けていますか?
–あなたの胃を守るための大切なステップ-
日本人に多いがんの一つに、胃がんがあります。かつては「国民病」とまで言われ、多くの方が命を落としてきました。しかし、医療の進歩や検診の普及により、早期発見・早期治療が可能になり、今では治るがんになってきています。
「胃がん検診ってどんなことをするの?」「胃カメラは痛そう…」「自分は受けるべきなの?」といった疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、そんな胃がん検診について、その重要性から検査の種類、そして「もし陽性だったら?」という不安まで、皆さんに分かりやすく丁寧にご説明します。あなたの胃の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。
なぜ胃がん検診が大切なの? ~早期発見が命を救う~
まず、なぜ胃がん検診がそれほどまでに重要なのか、その理由からお話ししましょう。
胃がんは、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。胃の痛み、もたれ、不快感といった症状は、胃炎やストレス、食べ過ぎなどでも起こり得るため、「いつものことだろう」と見過ごされがちです。しかし、症状が現れた時には、ある程度がんが進行してしまっていることも少なくありません。
早期の胃がんは、粘膜の表面にとどまっている段階を指します。この段階で発見し、適切な治療を行えば、5年生存率は90%以上と非常に高く、ほとんど治ると言われています。しかし、進行してしまうと、治療が難しくなり、予後も厳しくなる傾向にあります。
つまり、胃がん検診は、「症状がない段階で、がんの芽を見つけ出す」ための、非常に有効な手段なのです。早期発見こそが、あなたの命を守る鍵となるわけです。
胃がん検診の種類と特徴
胃がん検診には、主に以下の2つの方法があります。
- 胃部X線検査(バリウム検査)
- 胃内視鏡検査(胃カメラ)
それぞれの検査の特徴と、メリット・デメリットを見ていきましょう。
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胃部X線検査(バリウム検査)
バリウム検査は、白い液体(バリウム)を飲んで食道、胃、十二指腸の形や粘膜の様子をX線で撮影する検査です。
<検査の流れ>
- 前日: 検査前日の夜9時以降は飲食禁止です。
- 検査当日: 検査直前に、胃の動きを止める薬(注射の場合が多い)を打ち、胃を膨らませる発泡剤(炭酸の顆粒)を飲みます。
- バリウム服用: その後、白いバリウムをコップ一杯程度飲みます。
- 撮影: 検査台の上で、技師の指示に従って何度も体の向きを変えながら、様々な角度からX線写真を撮影します。胃の粘膜にバリウムを付着させ、凹凸や病変を映し出すためです。
- 検査後: 検査後は、バリウムを早く体外へ排出させるために、下剤を服用します。バリウムは固まりやすいので、水分を多めに摂ることも重要です。便が白くなるのが特徴です。
<メリット>
- 比較的短時間で検査が終わる。
- 胃カメラに比べて、身体的な苦痛が少ないと感じる人が多い。
- 費用が比較的安い。
<デメリット>
- バリウムの味が苦手な人もいる。
- 検査台の上で体の向きを何度も変えるのが大変な場合がある(特に高齢者)。
- X線被ばくがある(ごく微量ですが)。
- バリウムを体外に排出させるまで、便秘になることがある。
- 食道や十二指腸の一部が見えにくい場合がある。
- 微細な病変や粘膜の変化は発見しにくい場合がある。
- 病変が見つかっても、その場で組織を採取(生検)できないため、精密検査(胃カメラ)が別途必要になる。
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胃内視鏡検査(胃カメラ)
胃カメラは、細いスコープを口または鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を医師が直接目で見て観察する検査です。
<検査の流れ>
- 前日: 検査前日の夜9時以降は飲食禁止です。
- 検査当日: 検査前に、胃の中をきれいにする消泡剤を飲みます。次に、麻酔薬で喉(または鼻腔)の麻酔を行います。鎮静剤を使用する場合は、ここで点滴を行います。
- スコープ挿入: 口または鼻から内視鏡スコープを挿入します。
- 観察・処置: 医師がモニターを見ながら、食道、胃、十二指腸の粘膜を詳細に観察します。疑わしい病変が見つかった場合は、その場で組織を採取(生検)することも可能です。
- 検査終了: 検査時間は、観察だけであれば5~10分程度ですが、生検や処置を行う場合はもう少し時間がかかります。
<メリット>
- 粘膜を直接観察できるため、微細な病変や色の変化など、X線では見つけにくい異常を発見しやすい。
- 疑わしい病変が見つかった場合、その場で組織を採取(生検)して、がんであるかどうかの確定診断ができる。
- 早期がんの場合、その場で内視鏡的に切除できる場合がある(日帰り手術も可能)。
- 食道炎や逆流性食道炎など、胃がん以外の病気も見つけることができる。
<デメリット>
- 口から挿入する場合、喉の奥にスコープが触れることによる「オエッ」となる吐き気や不快感を伴うことがある。
- 検査中の苦痛を感じやすい人もいる。
- バリウム検査に比べて費用がやや高め。
<苦痛への対策>
最近の胃カメラ検査では、患者さんの苦痛を和らげるための様々な工夫がされています。
- 経鼻内視鏡: 鼻から挿入するため、舌の付け根に触れにくく、吐き気が少ないとされています。
- 鎮静剤: 点滴で鎮静剤を使用することで、ウトウトした状態で検査を受けられ、苦痛をほとんど感じずに済む方法です。検査後、しばらくはボーっとするため、車の運転などはできません。
- 細径スコープ: スコープが細くなっているため、口や鼻への負担が少ないです。
検査を受ける医療機関に、どのような方法が選択できるか相談してみましょう。
どちらの検査を受ければいいの?
胃がん検診の選択は、個人の状態や医療機関の方針によって異なります。
- 自治体のがん検診: 多くの場合、まずはバリウム検査が推奨されます。手軽に多くの人が受けられるため、スクリーニング(ふるい分け)検査として適しています。
- 人間ドックや医療機関での任意検査: 最近では、最初から胃カメラ検査を選択する人が増えています。より詳細な観察ができ、生検もできるため、一度で完結する検査として人気です。
どちらの検査にも一長一短がありますので、医師とよく相談し、ご自身に合った検査方法を選ぶことが大切です。当院では、胃カメラ検査を行っています。
どんな人が胃がん検診を受けるべき? 推奨頻度は?
胃がん検診は、一般的に40歳以上の方に、年に1回の受診が推奨されています。これは、40歳を過ぎると胃がんの発症リスクが上昇し始めるためです。
ただし、以下のような方は、それ以前から積極的に胃がん検診を受けることを検討したり、医師に相談したりすることをおすすめします。
- ピロリ菌に感染している(いた)方: ピロリ菌は胃がんの最大の原因と言われています。除菌治療済みの方も、胃がんのリスクがゼロになるわけではないため、定期的な検診が必要です。
- 胃がんの家族歴がある方: 血縁者に胃がんの人がいる場合、リスクがやや高まると言われています。
- 過去に慢性萎縮性胃炎と診断された方: 萎縮性胃炎は、胃がんの前段階となることがあるため、注意が必要です。
- 胃の不調が続く方: 症状がある場合は、検診を待たずに医療機関を受診しましょう。
「陽性」や「要精密検査」だったらどうする?
胃がん検診の結果が「要精密検査」や、バリウム検査で「異常あり」と診断された場合、多くは「胃カメラ検査」を受けることになります。
この結果を受け取ると、「もしかして、がん…?」と不安で頭がいっぱいになるかもしれません。しかし、落ち着いてください。
「要精密検査」は、「異常が見つかったので、詳しく調べましょう」という意味であり、「がんである」と確定したわけではありません。精密検査の結果、多くの場合は、胃潰瘍、胃炎、ポリープなどの良性疾患であることが判明します。
大切なのは、結果を放置せずに、速やかに医療機関を受診し、指示された精密検査を受けることです。精密検査を受けることで、早期に病気を見つけ、適切な治療へとつなげることができます。
まとめ ~あなたの胃は、あなたが守る~
胃がんは、早期発見・早期治療で治せる可能性が高いがんです。そのためには、症状が出る前に定期的に検診を受けることが何よりも重要です。
胃部X線検査、胃内視鏡検査、どちらの検査もそれぞれ特徴があります。ご自身の状況や不安に合わせて、最適な検査を選び、定期的に受診しましょう。そして、もし「要精密検査」という結果が出たとしても、怖がらずに次のステップへ進む勇気を持ってください。
あなたの胃の健康は、あなたが守るもの。ぜひ、胃がん検診を「自分事」として捉え、積極的に受診して、健康で安心な毎日を送りましょう。