バレット食道の食道がんリスク|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

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医療コラム

バレット食道の食道がんリスク|南條内科おなかクリニック|富山市の内科・消化器内科・内視鏡内科

バレット食道の食道がんリスク

バレット食道の食道がんリスク

バレット食道とは

食道の表面は、元々、扁平上皮で覆われていますが、胃酸や胆汁が食道に逆流することで食道の扁平上皮が円柱上皮に変化することがあり、バレット粘膜と呼ばれます。また、バレット粘膜がある食道をバレット食道といいます。バレット粘膜の範囲が全周性で3cm以上の食道をLSBE(long-segment Barrett’s esophagus)、LSBEの条件を満たさないものをSSBE(short-segment Barrett’s esophagus)と分類しています。さらに、SSBEのうち、バレット粘膜が1cm未満のものをUSSBE(ultra-short-segment Barrett’s esophagus)と呼んで、区別することがあります。

バレット食道の頻度

日本では、LSBEの頻度は0.2-0.3%と非常に低く、一方でUSSBEを含むSSBEは内視鏡検査を受けた方の15-80%に指摘されるありふれた所見です。胃がん検診や健康診断で胃カメラ検査を受けた場合、結果報告書ではLSBEとSSBE、USBBEを区別して記載されることは少なく、一緒くたに「バレット食道」と記載されることも多いので、この記事を読んでいただいている方の中にもバレット食道と診断されたことがある方が多くおられると思いますが、LSBE、SSBE、USSBEという用語は初めて聞かれたかもしれません。

バレット食道の食道がんリスク

食道がんは主に扁平上皮がんと腺がんに分けられますが、バレット食道のうちLSBEは食道腺がんとの関連が強いことが知られており、発がん率は年率1.2%と報告されています。一方で、SSBE、USSBEの発がんリスクは正確にわかっていませんでしたが、2024年に医学雑誌であるJournal of Gastroenterology誌に”Cancer risk by length of Barrett’s esopahagus in Japanese population: a nationwide multicenter retrospective cohort study”(著者:福田翔ら)が掲載され、SSBE、USSBEの食道腺がんリスクについて評価されました。この研究では、日本国内の17施設の過去の胃カメラのデータを解析し、33,478人を対象として、中央値で80.0か月間の観察にて、バレット食道が無い方(17,884人)、USBBEのある方(10,641人)、SSBEのある方(4,889人)、LSBEのある方(64人)で食道腺がんがどれだけ生じるか調べました。その結果、食道腺がんが生じた方の数は、バレット食道が無い方で0人(0%)、USBBEのある方で2人(0.0032%, 95%信頼区間 0.00066-0.013)、SSBEのある方で7人(0.026%, 95%信頼区間 0.011-0.054)、LSBEのある方で2人(0.58%, 95%信頼区間 0.042-2.11)でした。また、食道腺がんのリスク因子としてはバレット食道分類が有意な結果で(p<0.0001)、バレット粘膜が広範囲であるほど食道腺がんリスクが高いという結果になりました。

バレット食道に対する対応

バレット食道と診断されたらどのように対応したらよいでしょうか。LSBEの食道腺がんリスクは既報の通り高い結果でしたので毎年の胃カメラによる定期検査が必要です。SSBEの食道腺がんリスクはLSBEのおよそ10分の1、USBBEではおよそ100分の1ですから、具体的なフォローアップ間隔は次のガイドラインの発表を待ちたいと思いますが、過剰な心配は必要ないのではないでしょうか。健康診断の胃カメラ検査でバレット食道を指摘されて心配になり、「バレット食道」とWEB検索し食道がんリスクを知ってさらに心配になって当院を受診される方がおられますが、それだけを理由に前回の検査から1年以内に胃カメラ検査を行う必要はないと思います。「リスクを正しく知って適切に対処する」言うに易しく行うに難いことですが、この記事が一助となれば幸いに思います。