大腸がん検診を受けましょう!
- 2025年5月5日
- 消化器の病気
大腸がん検診を受けましょう!
便潜血検査ってなに?
知っておきたい大腸がん検診の第一歩
なんだか身近なようで、意外とよく知らない「便潜血検査」。健康診断や自治体のがん検診で受けたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、大腸がんをはじめとする大腸の病気を早期に見つけるための、とても大切で手軽な検査です。
ここでは、便潜血検査について、その目的と結果が陽性だった場合にどうすれば良いのか、分かりやすく丁寧にご説明します。「そういえば、そろそろ検査の時期かも…」という方も、「陽性って言われたらどうしよう…」と不安な方も、便潜血検査について正しく理解し、安心して検査を受けていただければ嬉しいです。
なぜ便潜血検査が大切なの?
~大腸がんの早期発見のために~
まず、なぜ便潜血検査が重要なのか、その目的からお話ししましょう。
便潜血検査は、文字通り「便の中に隠れている血液(潜血)」があるかどうかを調べる検査です。目には見えないわずかな血液でも検出できるのが特徴です。
では、なぜ便の中に血液が混じるのでしょうか? それは、大腸の中に何らかの病気があり、そこから出血している可能性があるからです。特に注意が必要なのは、大腸がんや大腸ポリープです。
大腸がんは、早期に発見して適切な治療を行えば、治癒率が高いがんです。しかし、初期の段階では自覚症状がほとんどないことが多く、「なんとなくお腹の調子が悪いな」「血便が出たな」といった症状が現れた時には、ある程度進行してしまっていることも少なくありません。
そこで役立つのが、便潜血検査です。進行する前に、病変からのわずかな出血を捉えることで、「もしかしたら大腸に何か異常があるかもしれない」というサインを見つけることができるのです。いわば、大腸からの「SOS」を見つけ出す検査と言えます。
この検査は、大腸がん検診のスクリーニング検査(ふるい分け検査)として広く行われています。多くの人が手軽に受けられるようにすることで、より多くの大腸がんを早期に発見し、命を救うことにつながっています。
便潜血検査ってどうやるの?
~手軽な検査方法~
便潜血検査は、自宅で簡単にできる手軽な検査です。特別な準備はほとんど必要ありません。
一般的に行われているのは、「免疫法」という方法を用いた便潜血検査です。これは、人間の血液に含まれるヘモグロビンという成分に特異的に反応する抗体を使って、便中のヘモグロビンを検出する方法です。この方法のメリットは、動物の肉などに含まれるヘモグロビンには反応しないため、食事制限をする必要がない点です。以前は食事制限が必要な検査方法もありましたが、現在は免疫法が主流となっています。
検査キットには、採便用の容器と、便を採取するためのスティックやブラシなどが入っています。
検査の手順
- 採便の準備
検査キットの説明書をよく読みましょう。通常、2日分の便を採取する「2日法」が一般的です。異なる日の便を採取することで、たまたま出血していなかった日があっても、出血の可能性を見逃しにくくします。 - 便の採取:
排便後、便器に流す前に、キットに入っているスティックやブラシを使って、便の表面をこすり取るようにして採取します。便全体からまんべんなく採取することが大切です。採取量は、キットによって指定されていますが、米粒程度で十分な場合が多いです。採取後は、容器にしっかりと蓋をします。 - 保管:
採取した便は、冷暗所に保管します。冷蔵庫に入れる必要はありませんが、直射日光の当たらない涼しい場所に置きましょう。 - 提出
2日分の便が採取できたら、速やかに指定された提出先に提出します。
採便時の注意点:
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- 生理中の女性は、経血が混じると正しく判定できない可能性があるため、生理期間を避けて検査を受けるようにしましょう。
- 痔からの出血がある場合も、陽性になることがあります。
- 便器の水に便が浸かってしまうと、成分が流れてしまう可能性があるため、便器の水に触れる前に採取するのが望ましいです。
- 下痢の場合は、正確な採取が難しいことがあります。可能であれば、形のある便が出るまで待ってから採取しましょう。
採便は少し抵抗があるかもしれませんが、慣れれば簡単です。説明書をよく読んで、正しく採取することが、正確な結果を得るために重要です。
検査結果の見方
~「陰性」と「陽性」の意味~
便潜血検査の結果は、主に「陰性」または「陽性」で通知されます。
陰性の場合
「陰性」という結果は、採取した便から目に見えない血液(潜血)が検出されなかった、という意味です。これは、現時点では大腸からの出血はないと考えられるため、大腸がんや進行したポリープの可能性は低いと判断されます。
しかし、「陰性だから絶対に大腸がんではない」というわけではありません。たまたま出血していない病変や、出血しにくい病変も存在します。便潜血検査は、あくまで「出血」というサインを手がかりにする検査だからです。ちなみに、便潜血検査(2日法)は大腸がんに対する感度が83%、特異度が96%と報告されています(日本の研究)。
そのため、便潜血検査が陰性であっても油断は禁物で、毎年、定期的に検査を受け続けることが大切です。また、お腹の調子が悪いなど、気になる症状がある場合は、陰性であっても病院を受診しましょう。
陽性の場合
「陽性」という結果は、採取した便から目に見えない血液(潜血)が検出された、という意味です。
「陽性」と聞くと、「がんかもしれない!」と不安になってしまう方がほとんどだと思います。しかし、落ち着いてください。「陽性=大腸がん」ではありません。
便潜血検査で陽性となる原因は、大腸がんやポリープ以外にもたくさんあります。例えば、
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痔からの出血
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大腸の炎症(感染性腸炎や潰瘍性大腸炎など)
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など、様々な原因が考えられます。
便潜血検査が陽性だったということは、「大腸のどこかから出血している可能性があるため、詳しく調べてみましょう」というサインなのです。
便潜血検査が「陽性」だったらどうする?
~精密検査のすすめ~
便潜血検査が陽性だった場合、次に取るべき行動はただ一つ、病院を受診して精密検査を受けることです。
陽性という結果に動揺したり、「どうせ痔だろう」と自己判断して放置したりすることは絶対に避けてください。放置してしまうと、もし大腸がんがあった場合、発見が遅れてしまう可能性があります。
陽性の原因を特定するための精密検査として、病院での「大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)」を受けましょう。
精密検査の主役! 大腸内視鏡検査とは?
大腸カメラ検査は、便潜血検査で陽性だった場合の精密検査として、最も重要視されています。便潜血検査では「出血があるかないか」しか分かりませんが、大腸カメラ検査では、大腸の粘膜を直接観察することで、出血している場所や、出血の原因となっている病変(ポリープやがん、炎症など)を詳しく調べることができます。
大腸カメラ検査に対して、「痛そう」「苦しそう」といった不安を感じる方も多いと思います。確かに、検査中にお腹が張ったり、痛みを伴ったりすることはありますが、鎮静剤や鎮痛剤を使用してリラックスした状態で検査を受けられるようにしたり、お腹の張りを軽減するために空気ではなく二酸化炭素を送気したりすることで、苦痛を少なく検査を受けていただくことができます。
便潜血検査のメリット・デメリット
どんな検査にも、良い点とそうでない点があります。便潜血検査のメリットとデメリットを理解しておくことも大切です。
メリット
簡便で手軽
自宅で便を採取するだけなので、時間や場所を選ばずに受けられます。
非侵襲的
体内に器具を挿入したり、注射をしたりするような痛みや苦痛がありません。
費用が比較的安い
他の検査に比べて費用が抑えられています。
大腸がん死亡率減少効果
多くの研究で、定期的な便潜血検査が大腸がんによる死亡率を減少させることが証明されています。
デメリット
出血していない病変は見つけられない
出血を伴わない早期がんやポリープは見逃してしまう可能性があります(偽陰性)。
大腸がん以外の原因でも陽性になる
痔や炎症など、大腸がん以外の原因で出血している場合でも陽性になります(偽陽性)。陽性の場合、必ず精密検査が必要になります。
進行がんでも出血しないことがある
大きながんであっても、出血しないタイプのものや、たまたま採取した便に出血が混じらなかった場合など、陰性となることがあります。
便潜血検査は完璧な検査ではありませんが、大腸がん検診の「第一歩」として、非常に有効な検査です。デメリットを理解した上で、メリットを最大限に活かすために、定期的に受けることが大切です。
どんな人が受けるべき? 推奨頻度は?
便潜血検査は、一般的に40歳以上の方に推奨されています。大腸がんの発生率は、40歳頃から徐々に増加し始めるためです。
推奨される検査頻度は、年に一度です。毎年欠かさずに検査を受けることで、万が一病変ができても、早期に発見できる可能性が高まります。
自治体によるがん検診や、職場の健康診断などで便潜血検査を受ける機会がある方は、積極的に活用しましょう。機会がない方も、病院で自費で受けることも可能です。
便潜血検査に関するよくある質問
Q:生理中ですが、検査を受けても大丈夫ですか?
A:いいえ、生理中の検査は避けてください。経血が混じると、正確な判定ができず陽性になってしまう可能性があります。生理が終わってから数日空けて検査を受けましょう。
Q:痔があるのですが、陽性になりますか?
A:痔からの出血でも陽性になることがあります。痔があるからといって検査を受けなくて良いわけではありませんが、陽性だった場合に痔が原因の可能性も考慮されます。まずは検査を受けて、陽性であれば病院で相談しましょう。
Q:下剤を飲んでいますが、検査できますか?
A:通常の下剤(便秘薬など)であれば検査に影響しないことが多いですが、検査前に医師に相談することをお勧めします。
Q:人間ドックで便潜血検査を受けましたが、自治体のがん検診も受けた方が良いですか?
A:人間ドックや職場の健康診断で便潜血検査を受けていれば、改めて自治体のがん検診を受ける必要はありません。重複して受けても問題ありませんが、1年に1回受けていただければ十分です。
まとめ
~便潜血検査を受けて、安心して毎日を過ごしましょう~
便潜血検査は、大腸がんを早期に発見するための、手軽で有効な検査です。完璧な検査ではありませんが、定期的に受けることで、大腸がんによる死亡リスクを下げることが科学的に証明されています。
便潜血検査で「陽性」と判定されても、必ずしも大腸がんではありません。しかし、精密検査を受けることで、出血の原因を特定し、もし早期がんやポリープが見つかっても、適切な治療によって完治を目指せる可能性が高まります。
40歳を過ぎたら、年に一度の便潜血検査を習慣にしましょう。そして、もし陽性だった場合は、不安になりすぎず、必ず病院を受診して精密検査を受けてください。
大腸がんの早期発見は、あなたの健康と大切な家族との時間を守ることにつながります。勇気を出して、便潜血検査を受けてみましょう!
ご自身の健康のために、そして大切な人のために、一歩踏み出すことの大切さを改めて感じていただければ幸いです。