アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、アレルギーを起こす原因物質である抗原の種類によって分類されます。
抗原が1年中あるので、症状も1年中あります。
抗原となる花粉が飛ぶ季節にだけ症状があります。
2024年の富山県におけるスギ花粉の飛散パターン予測をお示しします(富山県農林水産総合技術センター 森林研究所より)。
通年性、季節性ともに有病率は増えており、2019年の疫学調査では通年性アレルギー性鼻炎の有病率が24.5%、スギ花粉症の有病率が38.8%となっています。まさに国民病といっても過言ではない有病率です。通年性アレルギーは10代、20代に多いのに対し、花粉症は5歳以上から60代まで年齢を問わず有病率が30%を超えています。
通年性アレルギー性鼻炎では、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎などを合併することがあります。
花粉症では、アレルギー性結膜炎の合併が多く、眼のかゆみ、涙、充血などの症状を伴います。そのほか、のどのかゆみ、皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽい感じなどの症状が現れることがあります。
空気中に浮遊する原因物質である抗原が鼻の粘膜から体内に入ることによって起こります。
抗原が鼻に入ると、体の中に抗体(IgE抗体)がつくられ、これが鼻の粘膜のマスト細胞というアレルギーを起こす細胞について感作が成立します。感作せれるかどうかは、体質によって決まります。スギ花粉やダニでは約50%の人が感作されています。
感作された人の約50%に症状が現れ、これを発症といいます。どのような人が発症するかについては、体質(遺伝的素因、内的因子)や大気汚染や花粉飛散量など(外的因子)が影響すると考えられますが、はっきりと証明されたものは今のところありません。
感作された方の鼻に抗原が入ると、アレルギーを起こすマスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった化学伝達物質が分泌されます。ヒスタミンは神経を刺激してくしゃみや鼻水の原因になりますし、ロイコトリエンは血管を刺激して鼻づまりの原因になります。
鼻に入る抗原の量を減らすことは、治療の第一歩で、とても大切です。
掃除機をゆっくり動かし、1畳あたり30秒以上かけて、週に2回以上掃除する
布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけやめる。ベッドのマット、布団、枕にダニを通さないカバーをかける。
部屋を湿度 45%、室温 20-25℃に保つようにする。
できれば飼育をやめる。屋外で飼育し、少なくとも寝室に入れない。
ペット、飼育環境を清潔に保つ。
床をフローリングにし、よく掃除をする。
曝露する花粉の減少効果は、通常のマスクでおよそ70%、花粉症用のマスクでおよそ84%と報告されています。
また、利用するマスクは使い捨てとして、毎日交換することが推奨されています。
曝露する花粉の減少効果は、通常の眼鏡でおよそ40%、防御カバーのついた花粉症用のメガネでおよそ65%と報告されています。
また、コンタクトレンズは花粉によるアレルギー性結膜炎の症状を悪化させる可能性があるため、メガネに替えた方がよいと考えられています。
一般的にウール製の衣類などは木綿や化繊に比べて花粉が付着しやすいので、外側にウール素材の衣服を着用することは避けましょう。
また、つばの広い帽子や手袋も皮膚への花粉の付着量を減らすことに役立ちます。
うがいと洗顔はのどや顔に付いた花粉を洗い流すのに有効です。
窓の開け方を小さくしたり、レースのカーテンを閉めたりすることで屋内への花粉の流入を減らすことができます。また、換気後には床に花粉が付いていますので、掃除をするようにしましょう。
① 晴れて、気温が高い日、 ② 空気が乾燥して、風が強い日 、③ 雨上がりの翌日や気温の高い日が2~3日続いたあと は花粉が多く飛びます。また、1日の中では、昼前後と夕方に花粉が多く飛びますので、できるだけこのような日や時間帯の外出は避けましょう。
内服薬として、第2世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイド薬などがあります。内服のステロイド薬は副作用の観点から短期間の使用にとどめます。
鼻に噴霧する点鼻薬として、ステロイド薬、点鼻用血管収縮薬があります。点鼻のステロイド薬は定期的に使用することで十分な効果が発揮されます。全身への副作用はほとんどありません。点鼻用血管収縮薬は使いすぎると薬剤性鼻炎と呼ばれる強い鼻づまりが生じることがあるので必要な時だけ使うようにします。
その他、漢方薬を使用することがあります。また重症者に対しては専門医によって抗体製剤と呼ばれる高額な薬剤で治療することがあります。
花粉症の薬物療法のタイミングについて、以前は症状が出てから治療を開始することが多かったのですが、最近では花粉の飛散開始前または症状の極軽い時から薬物を予防的に服用することで、症状の発現を遅らせたり症状を軽くしたりすることが分かってきたため、症状が出る前や症状が出始めてすぐに治療を開始することをオススメしています。
舌の下に少ない量の抗原を定期的に入れて、2~3年かけてアレルギーを無くすことを目指す治療です。主にアレルギーの専門医によって行われます。
鼻づまりの強い方に対して、鼻の粘膜の一部を切り取って通り道を広げる手術などがあります。耳鼻科医によって行われます。